もしかしてこのメニューは、店員さんが、客の顔に浮かぶ狼狽の色を眺めて楽しむためにつくられたものなんじゃないかと考える。
そう思ってみると、このお店にはいつもお客がひと組ふた組しかいない。それに対して店員が5人いるので、結果手持無沙汰になった店員さんがぼんやりと客を見ている、という状況が多い。お水の交換とか超迅速。となると、店員が、そのひと組ふた組のお客に楽しみを求めるのも当然だ。
背中に店員からの視線を感じるような気がする。5人の視線が集中して私に注がれている気がする。あー見てるよ、見られてるよ。ここでとりみだした様子を見せたら私の負けなんだ。と思う。平然と「ショウフフウスパゲッティひとつ」って言うべきだ。そう思って、店員さんを呼んで、メニューの「娼婦風スパゲッティー」を指さして、指さしながら、「sy、あ、えっとベーコンとトマトのアラビアータお願いします」って言った。負け。